武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【ナイフとフォロー】

11月5日(水)

 

【ナイフとフォロー】

先日メールで、「焦っても仕方ないのですね」と書いたつもりが、「焦っても仕方ないので死ね」となっていて、焦って書き直した。

焦っても仕方ないのだが、焦らないことと時間を無駄にすることは違う。基本的に家事でも仕事でも、時間短縮ができるのであればしたい。私だけでなく、きっと多くの人がそう思っているから「時間短縮」という言葉自体、「時短」という言葉に縮まったようにさえ思えてくる。

映画「プラダを着た悪魔」の最後、アン・ハサウェイ演じるアンドレアは、メリル・ストリープ演じるミランダに、「あなたは先を読んで行動することができる」と言われるのだ。高校時代、私は演劇部に所属していたが、そこでも「アンテナを張ること」、つまり「先を読んで行動すること」を部員全員が心がけていた。前述の「時短」と、この「先を読んで行動する」ことというのは、どちらも多くの世界で求められていることであり、これらをこなすことは、「できる」行いなのである。

メールの予測変換機能は、私達が求めている言葉を予測して表示し、その文字を書く時間を短縮させてくれる、まさに私達が求めている時短と先を読むことが「できる」機能である。しかし私の勘違いかもしれないが、予測変換機能に表示される言葉というのは、自分が過去に書いた言葉のみではなかっただろうか。私は先日、「ナイフとフォーク」と書こうとして「ナイフとフォ」まで書いたら、予測変換の欄に「ナイフとフォロー」という言葉が表示されたのだ。

ナイフとフォロー。何度呟いてみても心当たりがない。私は気にしいなため、何かにつけて自分に関連付けることが得意である。例えば、明らかに迷惑メールであるとわかっていても、「これ、あのときぶつかった人からのメールかな」などと思っているのだ。しかしそんな私でも、きっぱりと心当たりがないと言える「ナイフとフォロー」なのだから、間違いなく私が書いた言葉ではない。ということは、予測変換機能は、自分が過去に書いた言葉を表示するだけでなく、書かれた言葉の、それこそ本当に先を読んで言葉を表示する機能ということなのか。それにしても「ナイフとフォ」まできたら、続く言葉は「ーク」しかないのではないか。