武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【アドレナリンたっぷりのときの声】

11月6日(木)

【アドレナリンたっぷりのときの声】
郵便ポストに、近所にある大学の学園祭のチラシが入っていた。私もおべんべんも、大学とは縁がなく興味があったため、先月ふたりでその学園祭に行ってきた。
別に見えなくてもいいのに、大学生に見えるようにしなければならないと思い、いつもより若そうな服を、と思ったが、いつもすれ違う学生達の服装を思い出すと、私が持っている、顔色の半分がショッキングピンクの女性が描かれたシャツや、多くの人が風船を持っている様子が金色で描かれたジーンズの方が明らかに子供っぽかったため、かえって大人らしい服装を探すことになった。
構内に入った途端に出店が並んでいて、お祭りムードが漂っていた。近所の住民も手作りの雑貨を販売していて、バザーのようなアットホームな雰囲気もあった。
進んでいくと、2匹の黒豚と数羽の鶏がいたのだ。彼らの小屋の前だけは日常が漂っていた。小さい頃クリスマスが近くなると、人間は幸せなのに、ノラ猫達はプレゼントもケーキもなく、いつもと変わらない寒い夜を過ごすのだろうとかわいそうに思っていた。動物達に人間のお祭りごとは関係ないのである。
土地勘が全くない私達は、進めそうな所ならどこへでも入っては戻ってを繰り返し、そのたびに動物小屋の前を通過した。今は少子化によって大学の生徒数も少ないため、小屋の前を何度も通過されることなどなかったのかもしれず、私達に対し、とうとう鶏がキレたのかと思った。もう何度目かわからないが、私達が彼らの前を通過しようとしたところ、鶏が一斉に騒ぎ始めたのだ。
潔癖症の私は、「サルモネラ菌サルモネラ菌!」と心で警報を発し、数歩後退した。しかしそれは、チアガール部と思われる女子生徒達が、偶然の再会か、感動の再会か、給料の前借りかを果たして騒いでいる声であった。彼女達は、目の前の体育館で行われるショーを控えているときだったのだ。