武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

歌人・エッセイスト 武井怜のブログです

【カントリーマアムの微笑み】

11月9日(日)

【カントリーマアムの微笑み】
以前はなかったと思うのだが、カントリーマアムを食べるとき、袋の右上にある▲openという表示の下に、カントリーマアムが微笑んでいる絵が描かれている。おそらく、この絵のためにカントリーマアムを買う人の数は、うちは先祖代々、家のものすべて茶葉で洗っていますという家庭の数よりも少なく、メーカー側も、あの絵によって売上げが上がるということは期待していないだろう。利益のためではないところに好感が持てる。
しかし問題は、開封口の真下という、その絵の位置である。ここから開けなさいと案内されているのに、そこにある微笑みを破ってはいけない気がして、いつも絵を避けて開ける小さな努力をしているのは私だけなのだろうか。
なぜわざわざあの位置に、微笑むカントリーマアムの絵が描かれているのだろうと考えた結果、私の中でふたつの答えが出た。
ひとつめは、「カントリーマアム飛び出し防止効果」である。私は経験がないが、あの絵がなかった以前のカントリーマアムは、袋を開けるときに勢いよく開けると、中身が飛び出て床に落ちてしまうというクレームが殺到したのではないだろうか。そこでメーカーは、開封口に微笑むカントリーマアムの絵を描き、その存在によって消費者に、私のようにこの絵を破ってはいけないという思いを働かせて慎重に袋を開けるようにさせ、カントリーマアムが飛び出てしまうことを減らす対策をとったのではないだろうか。
もうひとつ浮かんだことは、人生に関するメッセージではないかということだ。いつ顔が破かれてもおかしくない位置に描かれてしまったカントリーマアムからしたら、微笑んでいるが、常にコメカミに銃を突きつけられた気分なのではないだろうか。しかしもしかしたら、あの絵は、いつ死んでも悔いのないように、今を笑顔で生きようというメッセージなのかもしれないと思ったのだ。
あの絵に実は特に理由がないのならば、メーカーにこの理由をカントリーマアム5年分と交換してもいいと思っている。