【hitomiのイスは受け継がれる】

11月14日（金）

【hitomiのイスは受け継がれる】
父方の祖父母は、よく字を書く人であった。祖父はティッシュの箱に何やらたくさん字を書いていた。その内容に興味を持ったことがなかったため、何が書かれていたのかはわからない。
祖母は何にでも名前を書くのだ。私が4、5歳の頃、父に買ってもらったねこバスのぬいぐるみがあったのだが、祖母は、ねこバスの窓のひとつひとつをマス目にして、ね、こ、バ、ス、とマジックで書いたり、父や叔父のスーツにまで、内側に大きく名前を書いたことがあるらしいのだ。
祖父母から孫へと遺伝する、隔世遺伝という言葉を聞いたことがある。中学時代に、美術の授業で彫刻刀を使うことになり、私は姉のものを借りることにした。そのケースの中央に、姉の字でご丁寧に、ちょぅこくとぅ♡と書かれていたのだ。私はこれが隔世遺伝であると思っている。
姉は歌手であるhitomiのファンだったのだろう。自分の学習机を持っていたのだが、シルバニアファミリーの写真がプリントされたそのイスの背もたれにも、青いペンでhitomiのぃす♡とギネスに申請できそうなほどの大きな嘘を書いていた。hitomiのイスは、姉が実家を出てからは私の物となった。それと同時に、これまた青で、しかしこちらは立体的なペンで、Winter againと書かれたたんすも私の物になった。