武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【負けず嫌いのおべんべん】

11月15日(土)

 

【負けず嫌いのおべんべん】

過去のちびまる子ちゃんを観ていた。世界一小さな折り鶴に一同が感激する話で、それに影響され、私とおべんべんも小さい鶴を折ってみることにしたのだ。

より小さな鶴を折れた方が勝ちという勝負になった。おべんべんは普段は優しいのだが、勝負事になると勝たないと気が済まない性格なのだ。私はおべんべんと初めてぷよぷよの勝負をしたときからずっと、戦うときのおべんべんは缶に密閉してしまいたくなるほどに嫌いなのである。そのため私も、そんなおべんべんを負かしてやりたいという気持ちが原動力となり、おべんべんとの勝負事のときは勝ちを強く意識するのだ。

お互い背を向けて鶴を折り始めた。中学時代、私はクラスメイトから、一という漢字は書けないけど薔薇という漢字は書ける人と言われたことがある。たしかにステテコをきれいに畳めたことはないが、小さな鶴を折ることはできたのだ。私は小指の爪の半分ほどの大きさの鶴を、落とさないように、かつおべんべんの視界に入らないように大切に持っていた。

しかしまだ勝てたという確信は持てなかった。相手は缶詰にしたいほど負けず嫌いのおべんべんである。おべんべんはいつの日か、いきなりぴゃーっとなるときがあるんだと話していた。ぴゃーの意味が、私はいまだに理解できていない。もしかしたら小さい鶴を折るときに、ぴゃーっとなるのかもしれないではないか。きっとぴゃーはおべんべんの味方であり、おべんべんに人間離れした才能を送り込むのだ。それがぴゃーだ。そこらへんまで不安がよぎってきた頃、おべんべんが、ちょっと自分を過信していたと呟いた。

おべんべんの手の平から、いや、指の先、いや、爪の先から、まつ毛に乗っかっていても気づかなさそうなサイズの白い紙が見えた。そこにはかすかな折れ線がついていた。