武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【いつか広い場所で】

11月20日(木)
【いつか広い場所で】
リラクゼーションサロンで働いていた頃から、ORANGE RANGEのプロモーションビデオを見て、肩周りが張っていそうなメンバーの首の根元を親指で押してやりたくなったり、どうせ電車で人に寄りかかられるなら、彼らの背中の筋を押してやろうと思ったり、人の疲れていそうな箇所をほぐしたい衝動に駆られることがある。
私が座っているベッドを枕に、おべんべんが仰向けに倒れ込んでくると、私は何も言わず、おべんべんの左腕を揉み始める。左が終わり右腕に移るとき、そこが部屋の隅ということもあり、私は動かず、おべんべんに動いてもらうのだが、そのとき単純に寝返りを打つように反転すればいいものを、おべんべんはうつ伏せになるのが嫌なのか、「気をつけて!」と私に注意を促し、でんぐり返しをするのだ。前述のとおり、そこは部屋の隅であるため狭いのだ。でんぐり返しをしたおべんべんの足は着地できず、いつも壁に下半身全体がぶつかっている。痛そうであり、こちらもこわい。いつもでんぐり返り切れず、壁に足場を確保することを許されないおべんべんは、その体勢のまま左腕のとき同様、仰向けの状態で右腕を差し出してくるのである。
先日、おべんべんは左腕が終わったのに、方向転換後、私の前にまた左腕を出してきた。でんぐり返しを始める向きを間違え、私の前でただでんぐり返しを披露していたのだった。