武井怜のこの世は遊び場

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【けるん】

12月9日(火)

【けるん】
おべんべんと駅に向かうときなどに、「ヒルナンデス!」でやっていた「カタカナ禁止ゲーム」というものをよくやっている。
ルールは簡単。
「ルール」とか「ゲーム」とか、横文字を言った方が負けというゲームだ。
おべんべんが、
「怜なに食べたいって言ってたっけ?」
と聞くと私は、
「小麦粉の生地の上に、乳製品や肉や野菜がちりばめられたやつ(ピザ)」
と答える。
私が
「おべんべん、ごはんどこで買うって言ってたっけ?」
と聞くとおべんべんは、
「家族の、あそこ(ファミリーマート)」
と答える。
こんな感じで、お互い相手を負かせるために、カタカナに導く会話を繰り広げながら駅に向かうのだ。
一番悔しい負け方は、目に入った看板に書かれている店の名前などを、なんとなく声に出して読んでしまい、それがカタカナだったときだ。
目の前で勝ち誇った顔をするおべんべんと、言う必要もないカタカナを言ってしまった自分と、そして何の罪もないそのカタカナが憎くなる。
先日もいつものように、おべんべんとカタカナ禁止ゲームをしながら駅に向かっていた。
途中に「ケルン」という理容室がある。
そこの前を私達が通ったとき、おべんべんが
「ケルン」
と言ったのだ。
気持ちはわかるが、バカめ、と思った。
私はすかさず、鬼の首を取ったような顔で、
「あーケルンーケルンー!!」
と、おべんべんを指さして左右に体を揺らした。飛び跳ねもしていただろう。
だけどおべんべんは、首ならぬ、鬼の心臓を取ったような顔で、
「看板を見てごらんよ!!!」
と言った。
負け惜しみか、と思いながら私が看板に目をやると、そこには
「けるん」
とひらがなで書かれていた。