武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【一度でいいから】

12月10日(水)

【一度でいいから】
「一度でいいから」というセリフをよく耳にする。
それに続く言葉は、「〜したい、〜させてくれ」、つまり願望だ。
私にも願望がある。
ピザとチーズケーキとチョコレート菓子をたらふく食べたい、
海外ドラマみたいな生活を送りたい、
どうせ出っ歯ならリスみたいな顔になりたい、など。
一度でいいから。
一度でいいから?
一度でいいのか?
よくない、ずっと叶っていてほしい。
一度の長さが死ぬまでというのなら問題ないけれど、それは都合が良すぎる気がする。
私は、自分が抱くどの願望も「一度でいいから」叶ってほしいとは思えない。
むしろ一度叶った願望を、その後手放さなければならない方が辛くないだろうか。
リスみたいな顔になれた後、ただの出っ歯に戻るときの気持ちなんて、想像するだけで悲しみと恐怖が押し寄せてくる。
一度叶えばそれで満足、という願望が存在するのだろうか?
そう思っていた翌日、
「今年もグラコロバーガー食べたいなぁ、一度でいいから」
とひとりごとを言って、ハッとした。
だけどこれは、「今年も」というところがポイントだ。
私は過去にグラコロバーガーを食べたことがあり、既に一度叶っている願望なのだ。
やっぱり一度叶えばそれで満足という願望はないのだと思う。