武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【歌の力】

12月15日(月)

【歌の力】
おべんべんとケンカをして、私は頭を冷やすためにお風呂に入った。でも頭を冷やすのにお風呂に入るというのはおかしい気がする。水風呂でない限り。
おべんべんと私はケンカをするといつも、ヒートアップした後に冷戦状態が続く。とにかく家が静かになるのだ。
しかし私は今回、いつもとは違う、こんな作戦に出ようと考えた。
お風呂から上がってすぐに、おべんべんのパソコンからミスチルの曲をかけ、それに合わせて私は歌い始める。
歌うことを通して、私はもう怒っていないよアピールを始めるのだ。
しかしこれ、本当は違う。
おべんべんは、私はもう怒っていないのだと勘違いをして、ノッてくるだろう。
わざわざおべんべんのパソコンに入っているミスチルの曲を流すのは、おべんべんをノらせやすいからだ。
そしてノッたおべんべんは私と仲直りできると思い、謝ってくるはずだ。
そこで「勘違いしないで」というふうに、私がまだ怒っている態度をとれば、最高の突き落とし方ができると考えたのだ。
お風呂から上がって、早速ミスチルを流した。
しかし一曲目は、私が歌えない曲だった。
サビを聞いて、「あ、この曲だったんだ」と思わず言ってしまった。
おべんべんは構わず仕事をしていた。
三曲目にして、ようやく私が歌える曲がやってきた。
決してつかまえることのできない〜♪
おべんべんはまだノらない。
僕のした単純作業が〜♪
まだノらない。
おぉー、旅立ちの歌〜♪
まだ。
ダーリン、ダーーリーン♪
ミスチル本当に好きなのか?
と思ったけれど、
looking for love
今建ち並ぶ♪
ノッた!
おべんべんがノッた!
私が歌えない曲だったが、私もとにかくノらないと、怒っていないアピール(偽)ができないから、なんとなくわかるメロディーに合わせて「ん」で歌い続けた。 
次の曲も
その次の曲もおべんべんはノッた。
私もノッた。
すっかり楽しくなってしまった。
どちらが謝るでもなく会話が始まり、私達はお昼ごはんを一緒に食べた。
これを策士策に溺れるというのかなと思い、言葉の意味を調べたが違った。こんなマヌケなことはないのだ。