武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

歌人・エッセイスト 武井怜のブログです

【ノルウェーの鼻毛】

12月24日(水)

ノルウェーの鼻毛】
鼻息を吸いすぎているのか、鼻筋の内側全体に冷えを感じる。
鼻の中がロシアと思えばわかりやすい。
寒いロシアに吹く風、つまり鼻息も当然冷たく、それが手に当たると、強力なハンドクリームのCMで見た、ノルウェーサーモンの漁師達の姿が頭に浮かぶ。じゃあ私の鼻筋の内側は、ロシアではなくノルウェーだ。
一年前の夏、私は布団を本被りしたまま昼寝をした。
起きたら頭が痛くなっていて、デコルテの内側が気持ち悪くなっていた。
そのときに、横になりながら鼻息を吸った。
鼻息を、意識的に脳みそにプレゼントするように送ったら症状が和らいだ。
その症状は、布団を本被りしていないときも、夏の間じゅう何度か出たから夏バテだったのだと思うが、その症状が出るたびに、私は脳みそに鼻息を送り込んだ。するといつも症状が消えていった。
それ以来、私はオールシーズン、鼻息を吸うときに意識的に脳みそに送る傾向があるから、鼻筋の内側がノルウェーな今、このまま鼻息を吸い続けたら脳みそが凍ってしまう。
実際、最近頭が硬くなった。
大砲に頭がハマって抜けないグーフィーを見て、「死ぬ死ぬ」と言ったのだ。
手は鼻息をアウトプットするときだけ寒く、脳みそはインプットするときだけ寒い。
彼らも充分かわいそうなのだが、インプットとアウトプットするとき両方寒いのが鼻毛だ。
私が鼻毛なら、とっくに風邪をひいて立っていられないかもしれない。
鼻毛が風邪で全員倒れてしまっては困る。
鼻毛は、鼻くそを押さえつけるという大切な役割を担っていることを、小さい頃から知っている。
だから私は、鼻毛をあまりバカにしたことがない。
鼻毛がバタバタと倒れてしまったら、鼻毛から外出禁止をくらっていた鼻くそがとめどなく出てきて、私は一歩も外に出られなくなってしまう。