武井怜のこの世は遊び場

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【スマホのゆりかご】

4月4日(土)

スマホのゆりかご】
家に着いたらベッドの上に放り投げて、そのときたまに勢い余って壁に激突させてしまって、基本的に笑顔は向けず真顔で見つめる。
スマホのことだ。
これが対人間の話だったら、私は逮捕されているかもしれない。
そう考えると、私がスマホを大切にしていないことがよくわかる。
だから、マスクとうさぎの歯ブラシで、スマホにゆりかごを作ってあげた。
今の時代、スマホや携帯電話がなければ生きていけない、とよく聞くし、自分の口からもそう言ったことはあるけれど、実際にそうだったら問題だ。
とはいえ、スマホや携帯電話のおかげで、生活がどれだけ便利になったか、楽しくなったかと思うと、感謝するべき部分も大きい。
それなのに私は、スマホに対して、前述のような扱いをしてしまっているから、物を大切にするという意味でも反省をすることにして、スマホにゆりかごをプレゼントした。
プリーツ付きのマスクを半分に折ったら、耳にかけるヒモが持ち手のハンドバッグに変身した。
洗顔フォームのフタを落として流してしまったせいで、トイレはつまらせているし、洗濯物を掛けているから、カーテンレールも若干歪ませている気がして、これ以上、今暮らしている賃貸物件を破壊するわけにいかないから、壁に画鋲を刺すのはやめて、まだ使っていない吸盤付きのウサギの歯ブラシをテーブルに貼り付けて、そこにマスクのハンドバッグを引っ掛けてゆりかごにした。
スマホの気持ちはわからないけれど、これで一気にスマホが幸せ者になったように思える。
だけど、うさぎの歯ブラシの吸盤の力が弱いのとスマホが重いのとで、ゆりかごに乗せても、いつも一分くらいでみんな崩れて床に落ちてしまう。
スマホにとっては、これならベッドに放り投げられる方が衝撃が少なくていいわと思っているかもしれないけれど、壁に激突することと比べたら、どっこいどっこいだと思っていると思う。