武井怜のこの世は遊び場

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【消防士と放火魔のカップル】


4月14日(火)

【消防士と放火魔のカップル】
あるゲームのアプリをインストールした。
その中で私は、その街で暮らす人間達の名前から彼らの関係まで、すべてを託されている。
その街には、今のところ四人の人間が暮らしている。ジョーイとマイクの男性二人、レイチェルとロビンの女性二人だ。彼らは皆一人暮らしだ。
この街で初めての住人であるレイチェルは、アプリを始めたときにゲームの説明に従って建てた家で暮らしているから、他の三人よりも少しクオリティの高い、家具付きの家で生活をしている。他の三人には家具なしの家を購入したけれど、まだ家具を揃えていないから、キッチンで手を洗うか爪を掃除することくらいしかできない。
ジョーイの家はベッドも冷蔵庫もない中、コーヒーメーカーを購入した。そのゲームにはミッションがついてまわるからだ。今は、ジョーイとレイチェル、マイクとロビンをそれぞれ恋人にしようとしていて、デートとして二人で映画を観るところまでクリアしてきた。そのときに「コーヒーを淹れる」というミッションが与えられたから、まずコーヒーメーカーを設置した。
けれどいざコーヒーを淹れようと操作したら、「その位置ではコーヒーを淹れることができません」と表示された。それならどうしてそこに置くことを許可したのだろうと思った。
コーヒーメーカーを移動させようとタップしたけれど、どう操作しても移動することができなかったから、仕方なくジョーイのコーヒーメーカーは飾りにすることにして、そのミッションを、ジョーイのデート相手であるレイチェルの家で達成させた。
彼らは仕事もする。
けれど街にはまだ、彼らの家と消防署と科学館くらいしか建てられていない。
街の管理も私がするのだけれど、科学館は惰性で建てた。建物を建てる説明のときに消防署を建てた後、他の建物を建設するのは、今はまだ費用がもったいないと思った私は、住人全員の職場を消防署にした。だから住人全員が消防士の街になった。
けれどそれはゲームとして面白みがないと思ったから、そのときすぐに建設可能だった科学館を建てた。今はそこでマイクが働いているけれど、彼もロビンと恋人になることに励んでいて、まだ一度しか出勤していない。
このゲームには仕事のレベルみたいなのがあって、科学館に一度しか出勤していないマイクは今、「テスト被験者」のレベルだ。
消防士のジョーイは最近、「消防士」のレベルに上がった。
同じ消防士のレイチェルとロビンは、マイクと同じく一度しか出勤していないから、今は「放火魔」のレベルだ。だからジョーイとレイチェルが恋人になったら、消防士と放火魔のカップルになる。
四人の中で、どうしてジョーイだけ昇進したのかというと、ジョーイとレイチェルの映画デートの後、「ぐっすり眠らせる」というミッションが与えられたから、レイチェルを寝かせた。デートでどんなに疲れたのか、レイチェルは十一時間も寝続けた。だからジョーイは、彼女が寝ている間に、ちゃっかり昇進した。
マイクとレイチェルとロビンも、特に消防士のレイチェルとロビンは放火魔として放置しておくわけにはいかないから、さっき出勤ボタンを押したら、「機嫌が悪いときは働きに行きません」と表示された。