武井怜のこの世は遊び場

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【あましとペロンチョウの関係】

4月21日(火)

【あましとペロンチョウの関係】
近所のノラ猫に、あましという白猫と、ペロンチョウという、日本で一番多そうな柄の猫がいる。
ペロンチョウは、ちょっと顔見知りになると、ノラ猫失格なほど人懐っこい。大きな声で鳴きながら近づいてきて、人間の足元で丸いお腹を平気でさらす。
それとは正反対にあましはいつも、私やおべんべんを完全に無視してどでんと構えている。
あましは基本的に児童館の敷地内にいる。だから私達とあましはいつも、フェンス一枚隔てて会っている。だけどそのフェンスがなくて、いつでも人間が近づける状態だったとしても、あましは変わらずどでんと構えている。
あましを見た後にうしろを振り返るのが、彼らのなわばりに来たときの流れだ。うしろにある、家が並ぶ道沿いにペロンチョウがいることがあるからだ。
おべんべんとスーパーで買い物をした帰り道、その日は運良くペロンチョウがいた。
頻繁に会ってはいるものの、私達の足元にまで自分から寄ってくる、本当にノラ猫失格なペロンチョウだけれど、私はバカだとは思わない。
警戒心は持つべきなのだろうけれど、やっぱり相手を信じる姿勢は、人間も猫も変わらずきれいだからだ。
ペロンチョウは最初いつも、「そっちに私が行くの?めんどくさいなぁ、あんた達がいらっしゃいよ」と、その場で鳴き続ける。
今更だけれどペロンチョウはメスだ。ちなみにポムピンという、ペロンチョウと全く同じ柄の雄ネコの母親で、ポムピンが小さいときは、でぶっちょがペロンチョウで小さいのがポムピンと見分けがついたけれど、最近ポムピンもすっかり貫禄がついたから、一目見ただけではペロンチョウと見分けるのが難しくなった。だけどポムピンはペロンチョウの息子とは思えないほどに、人間に対する警戒心が強いから、私達を見て逃げたらポムピン、鳴いたらペロンチョウという判別になった。
私達とペロンチョウがお互い動かないでいると、だいたいいつもペロンチョウの方が折れる。ため息まじりに「はいはい負けましたよ」と、重い腰をあげてのっそり近寄ってくる。
ペロンチョウはあましに怯えている。
私達がペロンチョウに声を掛けても、あましがいるときは近寄ってこないし、手を振っても「んー、ちょっとね、、、」と、すごく気まずそうだからだ。
たぶんあましの前で人間になつくと、人間がそこを去った後、あましに「人間になつきやがって」と言われているのだと思う、というのが私とおべんべんの考えだ。
その日ペロンチョウは、最初にいた場所からはあましが見えなくて、私達に近寄り始めたところで初めてあましの姿が視界に入ったみたいだった。
あましに気づいたペロンチョウは、私達とものすごく中途半端な距離をとって、「あましさんがいるなら先に言ってよー」と私達に訴えていた。