武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【その状態で録音ができるのか】

5月13日(水)

【その状態で録音ができるのか】
スターバックスで私が注文できるメニューはふたつしかない。ホットティーのハイビスカスか、アイスティーのパッションだ。私はそれを制服でいうところの夏服、冬服のように飲み分けてきた。
今日からメニューを夏服に変えた。けれどもしかしたらまたすぐに冬服を引っ張り出すかもしれない。今日夏メニューにしたのは天候の影響でなく、目を覚ますためだったからだ。
朝からスターバックスへ仕事をしに来た。「セックス・アンド・ザ・シティ」のキャリー・ブラッドショーが、「スタバで仕事をしている人が嫌だったけれど、彼らがここへ来ている理由がわかった」と言った。「同居人が嫌になったからだ」と。
おべんべんはいびきが激しい。仕事の都合で夜に起きていて、朝から昼にかけての時間帯は寝ていることが多いおべんべんのいびきと私の仕事は、かなりの頻度で鉢合わせる。
仕事はいびきを嫌っている。それを知らないいびきは、韻を踏むほどの刻み良いリズムで仕事に話し掛けてくる。
「何考えてるのー?テルミープリーズ」
集中したい仕事は、
「あなた以外のことよー」
と韻を返すこともなくあしらう。
ところが昨日は、おべんべんのいびきが姿を現したときに私も寝ていたため、よく鉢合わせる仕事がいなかったのだ。孤独ないびきは泣き出したのか、いつもより激しく騒ぎ出した。のだと思う。
そして今朝、おべんべんの「牛みたい・・・」という落ち込んだ声で起きた。おべんべんは私からのメールを見たという。
牛?メール?
何のことか記憶にない。おべんべんによると、いびきを録音したものが私からメールで届いていたらしい。私は寝ぼけながらもおべんべんの激しいいびきに腹を立て、それを録音してメールで送りつけていたらしいのだ。
明け方まで仕事をしていたおべんべんは、その後もいびきをかいて眠った。
だから私はスターバックスに来たのだ。キャリー・ブラッドショーの言うとおり、同居人が嫌になったから。そして寝ぼけながらいびきを録音してメールを送りつけないよう、アイスティーのパッションで目を覚ますために。