武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【シュールな別れ】

5月20日(水)

【シュールな別れ】
小学生の頃に戻りたい。
というのは、私だけが今、小学生に戻りたいという意味ではない。あのときのお友達を道連れにして戻りたいのだ。それができないのなら、むしろ戻りたくない。
塾講師をやっていた頃に出会った小学生達に対しては、「話がわからない」と感じたことはなかった。それはきっと、彼らもそこが学校ではないことを彼らなりにわきまえていて、頭が「塾モード」になっていたからだと思う。私のことを武井ちゃん、たけぴょんなどと呼びつつも、武井ちゃんは学校の友達ではない、と線引きをしてくれていたから、私も彼らに合わせていた分、彼らも私に合わせてくれていたのだろう。
小学生が小学生モード全開のときに、たまごっちの時代に小学生だった私が彼らの縄張りにポンと放り出されたところで、どうしたらいいかわからなくなるはずだ。
今日の夕方、自動販売機の前で二人の男子小学生が、いわゆる「ボタンの同時押し」をしているところに遭遇した。
ひとりにつき二つボタンを押して、どの飲み物が出てくるかなというイベントかと思いきや、そこから何の落下音もしないから、彼らはただボタンを二人で同時に押すという行為を楽しんでいたらしい。その遊び、何がどうなれば正解なのだろうか。
私が彼らの前を通り掛かったと同時に、ひとりがなんの前触れもなく「じゃあな」と言って指を離し、その場から離れて行った。
その様子を見て私はてっきり、もう一人が「急に帰るなよ!」とツッコむのだとばかり思っていたのだけれど、なんと彼も当然のように自動販売機のボタンからパッと指を離し、「じゃあな!」と言って反対側へ走って行ったのだ。
突然飽きたのだろうか。
世間で今日も何千と行われていたであろう会議も、そうやって終わる日があっても面白いかもしれない。毎日はダメだ。決まるものも決まらなくなる。