武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

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【傘なしで過ごす梅雨】

6月12日(金)

【傘なしで過ごす梅雨】
先日の雨の日の夜、傘をさしたら友達が空の方を指さした。
初めての地だったから土地勘がなく、スカイツリーが見えたのかなと思いワクワクして彼女が指さす先を見たら、私の傘、我が家で唯一の傘の骨が、露骨に飛び出ていたのだった。
梅雨が始まったというのに、だから我が家には今、傘が1本たりともない。
冒頭から雨に打たれている話をしたため説得力に相当欠けるが、私は19歳のときにツバメを助けて以来、けっこう晴れ女なのだ。
ツバメの話を少しすると、正確にはそのツバメは私が発見したときには既に死んでいたから、私はツバメを助けたわけではない。みんなと一緒に空を飛びたかっただろうから「空」という名前をつけて、土に埋めたのだ。野鳥の菌とか、よく知らなかった。無知とは恐ろしく、素晴らしく、恐ろしい。
そのことをツバメが天国で感謝してくれ、いつも私の味方でいてあげようと思ってくれて、私に「わりと晴れ女」の権利をくれたのだと決めつけている。
だから私はツバメの「空」を信じて、傘を買わずにいようと思っている。普通レベルの雨に打たれた瞬間に買うという弱い意志だが。
高校時代、友達はコートを1度も着ることなく、果敢にもブレザーで高校生活を終えることに成功した。彼女も何者かを助けて、「わりと寒さに強い女」の権利をもらったのだろう。