武井怜のこの世は遊び場

歌人、随筆家の武井怜のブログです

歌人・エッセイスト 武井怜のブログです

【おなら】

11月27日(木)


【おなら】
もう20代後半である。

私はワッフルを食べる直前に落としてしまって泣きわめいたり、舌をやけどしたことを人のせいにするような、年齢のわりに相当子供っぽい性格ということを自覚しているが、そんな私ですら、近くにいる人がおならをしたくらいで、笑ったりバカにしたりしない。

おならなんて、それこそ屁でもないのだ。
おべんべんが、おならをするたびにこちらの反応を求めてくる。

そのとき私が特に何もしていないときなら相手をしてもいいのだが、それが文章を考えているときだったりすると、何度おならしてもいいから、こちらをチラチラ見るのはやめてくれと思う。

厄介なことに、私は子供の頃に、母から無視はいじめだと教わったため、誰に対しても無視はしないようにしている。

そのため、おならをしたおべんべんがこちらをチラチラ見てくるのを無視できず、「今のは優等生タイプだね」などと、何かしら反応を示すしかない。
おそらくおべんべんは、確実に私にも聞こえたおならの存在を無視されることが恥ずかしくて、私に反応を求めているのだろう。

わからなくもないが、もうおならなんてまばたきだと思ってほしい。
私がおならをしたとき、やはり私は何も反応しない。

しかしおべんべんは、私がおならをしたときですら、私の方をチラチラ見てくるのだ。私はおべんべんとは違い、おならをした恥ずかしさを和らげてほしい願望はないため、そんな気遣いはいらないのに。
毎日一緒にいる私達である。少なくとも私は、おべんべんに言えないことなどひとつもない。

私はおべんべんに、おならをしたからっていちいち反応求めたり、反応したりするのをやめてほしいと言った。

するとおべんべんは大笑いしながらも理解してくれたようで、次のおならからはこちらをチラチラ見てくることはなくなった。
しかし今度はなんだか私がおもしろくなってしまい、おべんべんのおならを聞くたび笑い出すようになってしまった。

おべんべんは、なに!と怒っていたが嬉しそうだった。