武井怜のこの世は遊び場

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【育ちの良さと頭の悪さ】

5月27日(水)

【育ちの良さと頭の悪さ】
古着屋で買ったワンピースにプリントされている水玉模様がちょいちょい剥げていたけれど、すごい安く買ったし、古着ってそういうものだろうと思っていた。
だけどそれがなんか不自然に多いなと思った。「くずしスタイル」というものなのだろうか。けれどそれは、育ちが良く見える丸襟(友達談であり、私も同感)のワンピースだ。育ちが良く見えるデザインにしておきながらくずすというのは、なんだろう、お嬢様生活に嫌気がさした思春期の女の子が、生活の拠点を「白金茶道クラブ」から「クラブ・age↑age↑パラダイス」に移すドラマでも描いているのだろうか。
けれどそれらは剥げた水玉模様ではなかったのだ。
リスだった。
剥げた水玉模様ではなく、なんとすべてリスの姿だったのだ。しかもクルミまで持っている。
さりげなさが好きなのは、私だけではないだろう。傘全体でなく、縁だけ花柄、靴全体でなく、中敷がトムとジェリー、体全体が「ウォーリーを探せ」のタトゥーではなく、首筋に「あ、見つかっちゃった!」というウォーリーがひとり。そのさりげなさを、きっと多くの人が好んでいるはずだ。けれどこのリスは、あまりにもさりげない。気づいたあなたはラッキーデー♪と謳ってもインチキとは言われないだろう。これを古着屋に売りに出した人も、きっと最後の最後まで気づかなかったに違いない。
ところでリスは、頬袋に入りきらなかったクルミを土に埋めるのだけれど、その場所を忘れてしまうらしい。
このワンピースは、育ちの良さと頭の悪さでバランスをとったデザインなのだろうか。